礼記 引用箇所抜粋

『大学』が引用する礼記・檀弓下の該当段落 全1箇所

① 檀弓下―「喪人無寶、仁親以為寶」(舅犯の言)

晋の公子重耳(後の文公)が父・献公の喪中に国外亡命していた際、秦の穆公が使者を送り「今こそ国に戻り君位を求めるべき時だ」と勧めた。それを聞いた重耳の伯父・舅犯(狐偃)が、亡命者としての本分を説いて重耳に辞退を勧めた場面。

以告舅犯、舅犯曰、孺子其辭焉、喪人無寶、仁親以爲寶。父死之謂何、又因以爲利、而天下其孰能說之。孺子其辭焉。

もっ舅犯きゅうはんぐ。舅犯きゅうはんわく、孺子じゅしせよ。喪人そうじんたからし、仁親じんしん以てたからちちこれ何をかわんや、またりて以てと爲さば、天下てんかたれく之をかん。孺子じゅしせよ。

重耳はこれを舅犯に告げた。舅犯は言った。「あなたはこの申し出をお断りなさい。国を追われた身の上の者に、これぞという宝はありません。ただ父を思う心こそが宝なのです。父の死とは何を意味することでしょうか。それを利用して自らの利益を得ようとすれば、天下の人々の誰があなたを納得させてくれましょうか。あなたはお断りなさい。」

『礼記』檀弓下に見えるこの場面は、『大学』では出典を明示せず「舅犯曰わく」とだけ記し、「亡人無以為寶、仁親以為寶」(本文表記は「喪人」ではなく「亡人」)として引く。国を追われた身では財貨よりも仁徳こそが真の宝であるという教え。『大学』は「真の国宝」の証(傳十章)として、前段の楚書(善を宝とす)と対で引用している。

底本:中國哲學書電子化計劃(ctext.org)等に基づく通行の『礼記』本文。訓読は伝統的な読み方に拠ったが、読み誤りが残っている場合はお知らせいただければ随時修正します。