書経 周書(二)

洪範 ――箕子、武王に天下統治の九大原則を説く

この読本について

殷を滅ぼした武王が、殷の遺臣・箕子を訪ね、天下を治める大原則を尋ねたところ、箕子が禹以来伝わる「洪範九疇(九つの大法)」を説いた篇です。五行・皇極(中庸の統治原則)・五福六極など、後世の中国思想に絶大な影響を与えた重要篇のため、全文を収めます。

洪範(こうはん)

殷討伐の翌々年、武王が箕子を訪ね、治国の大原則「洪範九疇」を授かる。

惟十有三祀、王訪于箕子。王乃言曰、嗚呼、箕子。惟天陰騭下民、相協厥居、我不知其彝倫攸敘。箕子乃言曰、我聞在昔、鯀陻洪水、汩陳其五行。帝乃震怒、不畀洪範九疇、彝倫攸斁。鯀則殛死、禹乃嗣興、天乃錫禹洪範九疇、彝倫攸敘。

十有三祀じゅうゆうさんしおう箕子きしう。王乃すなわち言いて曰わく、嗚呼ああ、箕子よ。惟れてん下民かみん陰騭いんしつし、きょ相協しょうきょうせしむるも、われ彝倫いりんついずるところを知らず、と。箕子乃ち言いて曰わく、我聞くむかしりて、こん洪水こうずいふさぎ、其の五行ごぎょう汩陳こつちんす。てい乃ち震怒しんどし、洪範九疇こうはんきゅうちゅうあたえず、彝倫いりんもっやぶる。鯀は則ち殛死きょくしし、乃ちぎておこり、天乃ち禹に洪範九疇をたまい、彝倫攸てついづ。

十三年目、王(武王)は箕子を訪ねられた。王はこう仰せられた。「ああ、箕子よ、天は下々の民を陰ながら安んじ、その暮らしを協和させておられるが、私はその常なる道理がどのように順序立てられているのか分からない。」箕子はこう申し上げた。「私が聞くところでは、昔、鯀が洪水を堰き止めようとして、五行(水火木金土)の働きを乱してしまいました。天帝は震え怒り、洪範九疇(九つの大法)をお授けにならず、常なる道理は乱れてしまいました。鯀は誅殺され、禹がその後を継いで興り、天は禹に洪範九疇をお授けになり、常なる道理は順序立てられたのです。」

初一曰五行、次二曰敬用五事、次三曰農用八政、次四曰協用五紀、次五曰建用皇極、次六曰乂用三德、次七曰明用稽疑、次八曰念用庶徵、次九曰嚮用五福、威用六極。

はじめのいちに曰わく五行ごぎょう、次の二に曰わく五事ごじ敬用けいようす、次の三に曰わく八政はっせい農用のうようす、次の四に曰わく五紀ごき協用きょうようす、次の五に曰わく皇極こうぎょく建用けんようす、次の六に曰わく三徳さんとく乂用がいようす、次の七に曰わく稽疑けいぎ明用めいようす、次の八に曰わく庶徴しょちょう念用ねんようす、次の九に曰わく五福ごふく嚮用きょうようし、六極りくきょく威用いようす。

「第一は五行、第二は謹んで五事を用いること、第三は努めて八つの政務を用いること、第四は協調して五つの紀(時の基準)を用いること、第五に皇極(君主の建てる中正の基準)を打ち立てて用いること、第六に三つの徳を用いて治めること、第七に卜占によって疑いを明らかにすること、第八に様々な徴(しるし)を考えて用いること、第九に五福をもって民を導き、六極をもって戒めることです。」

一、五行

一、五行、一曰水、二曰火、三曰木、四曰金、五曰土。水曰潤下、火曰炎上、木曰曲直、金曰從革、土爰稼穡。潤下作鹹、炎上作苦、曲直作酸、從革作辛、稼穡作甘。

いち五行ごぎょう、一に曰わくすい、二に曰わく、三に曰わくもく、四に曰わくきん、五に曰わくなり。水は潤下じゅんかと曰い、火は炎上えんじょうと曰い、木は曲直きょくちょくと曰い、金は従革じゅうかくと曰い、土はここ稼穡かしょくす。潤下はしおからきをし、炎上はにがきを作し、曲直はきを作し、従革はからきを作し、稼穡はあまきを作す。

「第一は五行です。一は水、二は火、三は木、四は金、五は土です。水は下に潤い流れる性質、火は上に燃え上がる性質、木は曲がったりまっすぐになったりする性質、金は形を変えて従う性質、土は種を蒔き収穫する性質を持ちます。下に潤い流れる水は鹹い味を生み、上に燃え上がる火は苦い味を生み、曲直する木は酸い味を生み、形を変える金は辛い味を生み、稼穡する土は甘い味を生みます。」

二、五事

二、五事、一曰貌、二曰言、三曰視、四曰聽、五曰思。貌曰恭、言曰從、視曰明、聽曰聰、思曰睿。恭作肅、從作乂、明作晢、聰作謀、睿作聖。

二に五事ごじ、一に曰わくぼう、二に曰わくげん、三に曰わく、四に曰わくちょう、五に曰わくなり。貌はきょうと曰い、言はじゅうと曰い、視はめいと曰い、聴はそうと曰い、思はえいと曰う。恭はしゅくを作し、従はがいを作し、明はせつを作し、聡はぼうを作し、睿はせいを作す。

「第二は五事です。一は容貌、二は言葉、三は見ること、四は聴くこと、五は思うことです。容貌は恭しくあるべきで、言葉は道理に従うべきで、見ることは明らかであるべきで、聴くことは聡くあるべきで、思うことは深遠であるべきです。恭しさは厳粛さを生み、道理への従順さは秩序を生み、明察は知恵を生み、聡明さは謀を生み、深遠な思慮は聖なる境地を生みます。」

三、八政 四、五紀

三、八政、一曰食、二曰貨、三曰祀、四曰司空、五曰司徒、六曰司寇、七曰賓、八曰師。四、五紀、一曰歲、二曰月、三曰日、四曰星辰、五曰曆數。

三に八政はっせい、一に曰わくしょく、二に曰わく、三に曰わく、四に曰わく司空しくう、五に曰わく司徒しと、六に曰わく司寇しこう、七に曰わくひん、八に曰わくなり。四に五紀ごき、一に曰わくさい、二に曰わくげつ、三に曰わくじつ、四に曰わく星辰せいしん、五に曰わく暦数れきすうなり。

「第三は八つの政務です。一は食糧、二は財貨、三は祭祀、四は土木を司る官、五は民の教化を司る官、六は刑罰を司る官、七は賓客を司る官、八は軍事を司る官です。第四は五つの紀(時の基準)です。一は年、二は月、三は日、四は星辰、五は暦法です。」

五、皇極

五、皇極、皇建其有極、斂時五福、用敷錫厥庶民。惟時厥庶民于汝極、錫汝保極。凡厥庶民、無有淫朋、人無有比德、惟皇作極。凡厥庶民、有猷有為有守、汝則念之。不協于極、不罹于咎、皇則受之。而康而色、曰、予攸好德。汝則錫之福。時人斯其惟皇之極。

五に皇極こうぎょくきみきょく有るを建て、五福ごふくあつめ、もっ庶民しょみん敷錫ふせきす。れ時に厥の庶民汝なんじきょくいて、汝に極をたもつをたまう。およそ厥の庶民、淫朋いんぼう有ること無く、ひと比徳ひとく有ること無きは、惟れきみの極をせばなり。凡そ厥の庶民、はかりごと有り有りしゅ有らば、汝則ちこれおもえ。極にかなわずして、とがかからざれば、皇則ち之を受く。なんじいろやすんじて、曰わく、われ好徳こうとくしたがう、と言わば、汝則ち之にふくを錫えよ。ひとれ其れ惟れ皇の極ならん。

「第五は皇極(君主が打ち立てる中正の基準)です。君主はその中正の基準を打ち立て、この五福を集めて、あまねく庶民にお与えください。この庶民があなたの基準に沿うようになったとき、あなたはその基準を保つ力をお授けになるのです。すべての庶民に、みだりな徒党がなく、人々に私的な結びつきがないのは、ただ君主が中正の基準を打ち立てているからです。すべての庶民の中に、計画があり、行動力があり、節操を守る者があれば、あなたはそれを心に留めてください。たとえその基準に完全には合わなくとも、罪過に陥っていなければ、君主はこれを受け入れなさい。その者が穏やかな顔つきで『私は徳を好み従っております』と言うならば、あなたはその者に福をお与えください。そうすればその人こそが、まさに君主の基準にかなう者となるでしょう。」

無虐煢獨而畏高明、人之有能有為、使羞其行、而邦其昌。凡厥正人、既富方穀、汝弗能使有好于而家、時人斯其辜。于其無好德、汝雖錫之福、其作汝用咎。無偏無陂、遵王之義。無有作好、遵王之道。無有作惡、遵王之路。無偏無黨、王道蕩蕩。無黨無偏、王道平平。無反無側、王道正直。會其有極、歸其有極。曰、皇極之敷言、是彝是訓、于帝其訓。凡厥庶民、極之敷言、是訓是行、以近天子之光。曰、天子作民父母、以為天下王。

しいたぐる無かれ煢独けいどくを、而(しか)して高明こうめいを畏れよ。ひとのう有り有る、其のおこないをすすめしめば、くに其れさかんならん。およ正人せいじん、既に富みてまさこくせば、なんじなんじいえき有らしむることあたわずんば、人斯れ其れつみせられん。其の好徳こうとく無きにいて、汝之これふくたまうといえども、其れ汝のもっとがさん。へん無く無く、おうしたがえ。しとするす有ること無く、王の道に遵え。しとする作す有ること無く、王のみちに遵え。偏無くとう無く、王道蕩蕩とうとうたり。党無く偏無く、王道平平へいへいたり。はん無くそく無く、王道正直せいちょくなり。其のきょく有るにかいし、其の極にせよ。曰わく、皇極こうぎょく敷言ふげんつねとし是れおしえとし、ていいて其れしたがえ、と。凡そ厥の庶民、極の敷言、是れ訓とし是れ行い、以て天子のひかりに近づけ。曰わく、天子は民の父母とりて、以て天下の王とる、と。

「身寄りのない者を虐げず、高く明らかな徳を持つ者を敬いなさい。能力と実行力のある人物には、その行いを大いに発揮させれば、国は栄えるでしょう。すべての役人たちが、すでに豊かでありながらまさに善行を積むようになれば、あなたが彼らの家に幸いをもたらすことができなくとも、その者たちは自ら過ちを犯すことがなくなります。徳を好まぬ者に対して、たとえあなたが福を与えたとしても、それはかえってあなたにとって咎めとなるでしょう。偏りなく、傾きなく、王の正義に従いなさい。私的な好みで行動することなく、王の道に従いなさい。私的な憎しみで行動することなく、王の道筋に従いなさい。偏りなく徒党なく、王の道は広々としています。徒党なく偏りなく、王の道は平らかです。背くことなく傾くことなく、王の道はまっすぐです。この中正の基準に集まり、この基準に帰依しなさい。君主の広く述べたこの言葉を、常の道とし教えとし、天帝の教えに従うのです。すべての庶民も、この基準の言葉を教えとし実行として、天子の輝きに近づくようになさい。天子は民の父母となって、それゆえ天下の王となるのです。」

六、三徳

六、三德、一曰正直、二曰剛克、三曰柔克。平康正直、彊弗友剛克、燮友柔克。沈潛剛克、高明柔克。惟辟作福、惟辟作威、惟辟玉食。臣無有作福作威玉食。臣之有作福作威玉食、其害于而家、凶于而國。人用側頗僻、民用僭忒。

六に三徳さんとく、一に曰わく正直せいちょく、二に曰わく剛克ごうこく、三に曰わく柔克じゅうこくなり。平康へいこうは正直、きょうにしてしたがわざるは剛克、やわらぎ友うは柔克なり。沈潜ちんせんは剛克にし、高明こうめいは柔克にす。ただきみのみふくし、惟辟のみを作し、惟辟のみ玉食ぎょくしょくす。しんに福を作し威を作し玉食すること有る無かれ。臣の福を作し威を作し玉食すること有らば、其れなんじいえがいし、而の国にきょうせん。ひともっ側頗僻そくはへきし、たみ用て僭忒せんとくせん。

「第六は三つの徳です。一は正直、二は剛克(剛強によって治める)、三は柔克(柔和によって治める)です。世が平和で安らかな時は正直をもって治め、強情で従わぬ者には剛強さをもって治め、和やかで従順な者には柔和さをもって治めます。内に沈み潜みがちな者には剛強さで励まし、高慢で明るすぎる者には柔和さで和らげます。ただ君主だけが福を与え、ただ君主だけが威罰を与え、ただ君主だけが美味を独占すべきです。臣下が勝手に福を与えたり威罰を与えたり美味を独占したりすることがあってはなりません。もし臣下がそのようなことをすれば、それはあなたの家を害し、あなたの国に凶事をもたらすでしょう。人々は不正に傾き、民は道を踏み外すことになりましょう。」

七、稽疑

七、稽疑、擇建立卜筮人、乃命卜筮。曰雨、曰霽、曰蒙、曰驛、曰克、曰貞、曰悔。凡七、卜五、占用二、衍忒。立時人作卜筮、三人占、則從二人之言。汝則有大疑、謀及乃心、謀及卿士、謀及庶人、謀及卜筮。汝則從、龜從、筮從、卿士從、庶民從、是之謂大同。身其康彊、子孫其逢吉。

七に稽疑けいぎ卜筮ぼくぜいの人をえらて、すなわち命(めい)じて卜筮せしむ。曰わく、曰わくせい、曰わくもう、曰わくえき、曰わくこく、曰わくてい、曰わくかいなり。およしちぼくいつつ、せんは二つを用い、衍忒えんとくす。の人を立てて卜筮をさしめ、三人さんにん占わば、則ち二人ににんげんに従え。なんじ則ち大疑たいぎ有らば、はかりごとなんじこころおよぼし、謀を卿士けいしに及ぼし、謀を庶人しょじんに及ぼし、謀を卜筮ぼくぜいに及ぼせ。汝則ち従い、かめ従い、ぜい従い、卿士従い、庶民しょみん従わば、これ大同だいどうと謂う。其れ康彊こうきょうにして、子孫しそん其れきちわん。

「第七は疑いを卜占で正すことです。占いに通じた者を選んで立て、彼らに命じて卜占を行わせます。占いには、雨の形、晴れの形、霧の形、疎らな形、勝つ形、正の卦、悔の卦があります。全部で七通り、亀甲による卜が五通り、蓍による占が二通りで、これらを推し広げて判断します。このような専門の者を立てて卜占を行わせ、三人が占ったならば、二人の一致する言葉に従いなさい。もしあなたに大きな疑いが生じたら、まずあなた自身の心に問い、次に卿や大夫に問い、次に庶民に問い、そして卜占に問いなさい。あなたも占いの結果も、卿士も庶民も、皆が一致して従うならば、これを『大いなる一致』と言います。あなた自身は健やかであり、子孫にも吉事が訪れるでしょう。」

汝則從、龜從、筮從、卿士逆、庶民逆、吉。卿士從、龜從、筮從、汝則逆、庶民逆、吉。庶民從、龜從、筮從、汝則逆、卿士逆、吉。汝則從、龜從、筮逆、卿士逆、庶民逆、作內吉、作外凶。龜筮共違于人、用靜吉、用作凶。

汝則ち従い、亀従い、筮従うも、卿士逆さからい、庶民逆らうも、吉なり。卿士従い、亀従い、筮従うも、汝則ち逆らい、庶民逆らうも、吉なり。庶民従い、亀従い、筮従うも、汝則ち逆らい、卿士逆らうも、吉なり。汝則ち従い、亀従うも、筮逆らい、卿士逆らい、庶民逆らわば、うちせば吉、そとを作せば凶なり。亀筮きぜいともひとたがわば、せいを用いれば吉、さくを用いれば凶なり。

「あなたと亀卜と蓍占が一致していれば、たとえ卿士や庶民が反対しても、吉です。卿士と亀卜と蓍占が一致していれば、たとえあなたや庶民が反対しても、吉です。庶民と亀卜と蓍占が一致していれば、たとえあなたや卿士が反対しても、吉です。あなたと亀卜は一致しても、蓍占・卿士・庶民が反対するならば、国内のことを行えば吉、国外のことを行えば凶です。亀卜も蓍占もともに人の意見と食い違うならば、静かにしていれば吉、事を起こせば凶となります。」

八、庶徴

八、庶徵、曰雨、曰暘、曰燠、曰寒、曰風、曰時。五者來備、各以其敘、庶草蕃廡。一極備凶、一極無凶。曰休徵、曰肅、時雨若。曰乂、時暘若。曰晢、時燠若。曰謀、時寒若。曰聖、時風若。

八に庶徴しょちょう、曰わく、曰わくよう、曰わくいく、曰わくかん、曰わくふう、曰わくなり。五者ごしゃ来たりそなわり、おのおの其のじょを以て、庶草しょそう蕃廡はんぶす。一極いっきょく備わるも凶、一極無きも凶。休徴きゅうちょうに曰わく、しゅく時雨じうこれしたがう。がい時暘じよう之に若う。せつ時燠じいく之に若う。ぼう時寒じかん之に若う。せい時風じふう之に若う。

「第八はさまざまな徴候です。雨、晴天、暑さ、寒さ、風、そしてこれらが時宜にかなうことです。この五つが揃って備わり、それぞれが順序よく現れれば、多くの草木が繁茂します。一つが備わりすぎても凶、一つが全く無くとも凶となります。良い徴候について言えば、君主が厳粛であれば、それに時宜にかなった雨が応じます。よく治まれば、それに時宜にかなった晴天が応じます。明察であれば、それに時宜にかなった暑さが応じます。よく謀れば、それに時宜にかなった寒さが応じます。聖明であれば、それに時宜にかなった風が応じます。」

曰咎徵、曰狂、恆雨若。曰僭、恆暘若。曰豫、恆燠若。曰急、恆寒若。曰蒙、恆風若。曰王省惟歲、卿士惟月、師尹惟日。歲月日時無易、百穀用成、乂用明、俊民用章、家用平康。日月歲時既易、百穀用不成、乂用昏不明、俊民用微、家用不寧。庶民惟星、星有好風、星有好雨。日月之行、則有冬有夏。月之從星、則以風雨。

咎徴きゅうちょうに曰わく、きょう恒雨こうう之に若う。せん恒暘こうよう之に若う。恒燠こういく之に若う。きゅう恒寒こうかん之に若う。もう恒風こうふう之に若う。曰わく、おうせいさい卿士けいしは月、師尹しいんは日なり。歳月日時さいげつじつじかわること無ければ、百穀ひゃっこくもって成り、がい用て明らかに、俊民しゅんみん用てあきらかに、いえ用て平康へいこうなり。日月歳時既に易われば、百穀用て成らず、乂用てくらくして明らかならず、俊民用てに、家用てやすからず。庶民しょみんは惟れほしのごとし、星に好風こうふう有り、星に好雨こうう有り。日月のこうは、則ち冬有り夏有り。月の星に従うは、則ち風雨ふううを以てす。

「悪い徴候について言えば、狂妄であれば長雨が応じます。僭越であれば長い日照りが応じます。安逸であれば長い暑さが応じます。性急であれば長い寒さが応じます。無知蒙昧であれば長い風が応じます。王の視察は一年を単位とし、卿士は一月を単位とし、下級役人は一日を単位とします。年月日の運行が乱れなければ、穀物はよく実り、政治はよく治まり明らかになり、優れた人材は明らかに登用され、家々は平安になります。年月日の運行が乱れれば、穀物は実らず、政治は暗く不明瞭になり、優れた人材は埋もれ、家々は安らかでなくなります。庶民は星のようなものです。星には風を好むものもあれば、雨を好むものもあります。日月の運行には、冬もあれば夏もあります。月が星に従うことによって、風雨がもたらされるのです。」

九、五福・六極

九、五福、一曰壽、二曰富、三曰康寧、四曰攸好德、五曰考終命。六極、一曰凶短折、二曰疾、三曰憂、四曰貧、五曰惡、六曰弱。

九に五福ごふく、一に曰わく寿じゅ、二に曰わく、三に曰わく康寧こうねい、四に曰わく好徳こうとくしたがう、五に曰わく考終命こうしゅうめいなり。六極りくきょく、一に曰わく凶短折きょうたんせつ、二に曰わくしつ、三に曰わくゆう、四に曰わくひん、五に曰わくあく、六に曰わくじゃくなり。

「第九は五福と六極です。五福とは、一に長寿、二に富、三に心身の健やかな安らぎ、四に徳を好み行うこと、五に天寿を全うして安らかに世を終えることです。六極とは、一に若くして不幸に死ぬこと、二に病、三に憂い、四に貧しさ、五に醜悪、六に病弱であることです。」